対人恐怖症は遺伝してしまうの?

自分の家族や友人など極々親しい人以外と接する時に、過度な恐怖心を抱いてしまう病気が「対人恐怖症」です。病気とは言っても、外見で判断することは出来ませんので、初めて接する人には誤解を招く可能性もあります。また、症状の程度には個人差があり、「人見知り」「人付き合いを苦手にしている」という人もいれば、自分の思い込みによって誰とも接することが出来ないという状況にまで追い詰められてしまうケースもあります。
対人恐怖症は日本人に多い病気であると言われています。その理由としては、外国と日本の文化の違いにあると言えるでしょう。例えば、外国の場合、自分の意見を持たない、自分の意見を主張しないということは良くないことであるという文化があります。また、他人と自分が違っていることに対してのスタンスも異なります。日本の場合、自分ひとりが何かを主張したり、目立ったりするよりも集団の中の協調性に重きを置く傾向にあります。その為、外国に比べると、他の人からどのように見られているのか、どのように思われているのかを感じやすく、それが対人恐怖症に発展しやすいと言われています。
ただし、対人恐怖症は日本人特有の病気であるわけではありません。海外でも悩まされている人がたくさんいます。他の人の視線が気になったり、自分の体臭などのニオイや姿形にコンプレックスを持っていることが症状としてあらわれているとも言われています。
対人恐怖症は遺伝的な影響があるとされています。生まれもっての気質である事もあれば、親の養育が影響していることもあります。対人恐怖症になりやすい気質としては、知らない場所や人、苦手なことなどに対して不安を抱きやすい不安気質、不安に感じたことを回避使用をする抑制気質が挙げられます。性格的な傾向として不安を感じやすいという場合もあります。不安や恐怖を感じたことに対して回避しようとする行動抑制は遺伝の影響を受けやすいと言われています。
そして、子供に対する親の接し方によって恐怖心の抱きやすさに差が出てきます。ある程度の年齢になるまで、子供が最も過ごす時間が長いのは親です。その為、社会との接し方、他の人との接し方は親の行動を見て学ぶことが多いことでしょう。ある調査によると、両親のうちどちらか一方に対人恐怖症があった場合、遺伝要因や環境交互作用が働くため、子供が対人恐怖症になるリスクはそうではない場合に比べると2倍から6倍になるとされています。そして、内向的傾向や行動抑制、神経質な性格、恥ずかしがり屋な性格などに関連する遺伝子が対人恐怖症に何らかの影響を及ぼしているのではないかとも言われています。
ただし、両親のどちらか一方が対人恐怖症であったとしても、その間に生まれた全ての子供が同じような症状が出るわけではありません。遺伝の影響はゼロではありませんが、それよりも環境面の影響が大きいと言われています。
環境面で挙げられることとしては、「育てられ方」「失敗体験」「いじめなどの過去のトラウマ」「性格」「年齢や性別」などです。子供の頃に親や周囲の大人の顔色をうかがうことが多かった、過保護、愛情を十分に得られなかったという育てられ方をした場合、失敗してはいけないと強く思ってしまったり、親が子供の行動を抑制するがあまりコミュニケーション能力を育むことが出来ない、自己肯定感が低くなることが考えられます。
成功体験は人を成長させますが、失敗体験が積み重なると、他の人からどのように思われているのか、失敗するのが怖いという気持ちが先に立ってしまい、他人と接することそのものに恐怖を感じるようになります。他の人からすると些細な失敗とも言えないようなことでも、本人の中では重大な失敗をしたと感じているケースもあります。
対人恐怖症は過去のトラウマが発症のきっかけとなることもあります。また、一見すると良いことのように思える昇進などの社会的な役割の変化が発症の原因となることもあります。これは昇進をすることでこれまで以上の責任を負うこと、他の人からの注目を浴びるようになることが不安としてあらわれるためとされています。
人には生まれ持った気質があります。そして、育てられた環境やその人の経験から性格が形成されます。対人恐怖症になりやすい性格としては、内向的・恥ずかしがり屋・慎重・回避的があります。
対人恐怖症は10代前半から発症することが多く、学校に通うことが難しくなり、不登校や引きこもりの原因にもなります。女性の方が発症することが多いと言われていますが、人前に出ることの多い男性の方が女性よりも深刻に症状に悩まされている人が多い傾向にあります。
対人恐怖症の人は他の人の目を気にすることが多いため、自分の意見を主張することが出来ないため、悩みを抱え込みやすいようです。他の人からは控えめな性格として捉えられることが多いということもあり、一人で悩むことも少なくはありません。
対人恐怖症は遺伝の影響はゼロではありませんが、それ以上に性格や育った環境、様々な経験の影響が大きいと言えます。